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労働法

A. 過労死・過労自殺

1. 「過大残業による労働災害保険の認定について」(厚生労働省平13通達)

脳・心臓疾患が、「時間外労働が発症前1ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当り45時間以内であれば、業務起因性は少ない。発症前1ヶ月間に100時間以上、または発症前2ヶ月ないし6ヶ月間に80時間以上であれば、業務起因性は強いと評価する。」

時間外労働を1ヶ月あたり45時間を超えるものとする三六協定は窓口において受理しないように指導する。(同平14通達)

2. 基礎疾患の存在

・高血圧症の基礎疾患を持つ者が午後8時から午前5時までの夜間勤務のパン製造に従事していたところ、残業はほんどないものの、勤務中に心筋梗塞を発病した場合に、労働災害を認定。(東京高判昭54)
・脳動脈瘤の基礎疾患をもつ看護婦が救急病棟で月10回以上の夜勤を含む交代制勤務をしていたところ、残業はほんどないが、勤務中にくも膜下出血を発症したのを労働災害と認定。(津地判平12、名古屋高判平4)
・不規則勤務時間の若い警察官の不整脈による過労死を労働災害と認定。(大阪地判平12、大阪高判平14)
・脳動脈瘤奇形をもつ高校教師が長時間労働による過労により病状を急激に悪化させて死亡した場合を労働災害と認定。(東京高判平9、名古屋高金沢支判平12)

3. 発症後の入院治療の困難

・高校の体育教師が不安定狭心症を発症し、これ自体は業務上の過重負荷によるものかどうかわからないが、仕事の都合で入院治療ができないでいるうちに心筋梗塞により死亡したのを労働災害と認定。(最判平8町田高校事件)
・肺炎を罹患していた工場調理師が、業務自体は過重ではないがその治療に相当の日数を要し、仕事の都合上、それができないでいるうちに死亡したのを労働災害と認定。(大阪高判平12)

4. 「過労自殺の労災保険について」(厚生労働省平11通達)

(1)精神障害を発症していること

(2)発症前おおむね6ヶ月の間に客観的に精神障害を発症させるおそれのある強い心理的負荷が認められること

(3)業務以外の心理的負荷および個体側要因により精神障害を発症したとは認められないこと。

 5. 債務不履行

会社に安全配慮義務の不履行があるときは、民事訴訟により会社に損害賠償を求めることができる。長時間労働とうつ病と自殺との間に相当因果関係を認め、会社に安全配慮義務の不履行を認めた電通過労自殺事件がその典型である。(最判平12)

慰藉料その他労災保険より多くの賠償が認められるが、過失相殺がなされることがある。

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B. 通勤災害

「通勤の往復の経路を逸脱または中断した場合、その後の往復は通勤としない。ただし、その逸脱または中断が日常生活上必要な行為であってやむをえない事情により行う必要最小限のものである場合は、その逸脱中断の間を除き、通勤とする。」(労災保法7条3項)
「日常生活上必要な行為」とは、日用品の購入、職業訓練・教育、選挙権の行使、病院での治療等」(労災保則8条)

・夕食の材料を買うため自宅と140M反対方向の店で買い物をした帰り、通常の帰り道に至る40M手前で交通事故にあった。逸脱中の事故であり通勤災害に該当しない。(札幌高判平元)
・「義父の介護のため1時間40分の寄り道をした帰りに交通事故にあった。「日常生活上必要な行為」に入る。(大阪地判平17)

 ・「単身赴任者の赴任先住所と帰属先住所の移動中の事故」も通勤災害と認められることになった。(平18/4から)

 

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C. 懲罰的「付加金」の請求

解雇予告手当(30日分)(労基20)
休業手当(60%)(26)
時間外等の割増賃金 (37)
有給休暇中の賃金(39)
の支払いを怠った使用者に対して、裁判所はこれと同額の懲罰的「付加金」の支払を合わせて命ずることができる。(114)

このためには、簡易裁判所(140万円まで)の少額訴訟手続(60万円まで)を利用するのが簡便である。本人で提訴でき、原則 1回で終る。

 

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D. 労働基準監督署(労働局)に対する情報公開の請求

行政情報公開法による。

(1)労働基準監督官の署長に対する「監督復命書」、「災害調査復命書」

(2)「労働者死傷病報告書」

(3)「是正勧告書」の控え

(4)「指導票」の控え

(5)「使用停止等命令書」の写し

(6)「是正報告書」

 

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E. 労働基準監督署への申告

次のような場合には、労働基準監督署へ「申告」する。是正勧告、是正指導、悪質な場合は、送検につながる可能性がある。
本人のためばかりでなく、仲間の労働者や、ひいては労働者一般のためでもある。

(イ)サービス残業

時間外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金の不払い。(労基37)
裁量労働制、年俸制(年俸制でも割増賃金の適用はある。)や、
仮眠時間手待ち時間、事業場外みなし労働時間の不適切な適用の事例が多い。
さらに管理監督者に適合しないのに割増賃金を払わない場合も多い。

(ロ)過労死・過労自殺

(ハ)労災かくし

元請けの労災保険を使わず、発生現場を偽り下請けの作業場にして下請けの労災保険をを使わせるいわゆる「とばし」の事例も多い。
バイト、パート、契約社員、派遣社員、偽装請負、外国人でも労災保険は受けられる。事業主が労災の加入手続きをしてなかった場合でも、被害者の労災請求は可能であり、事業主には費用負担請求が行く。

(ニ)偽装請負

社会保険に入れない、年休の取得ができない、労災保険が受けられない、などの可能性がある。最初から黙示の労働契約があったものと認定して、解雇期間中の給料の支払いを命じた判例がある。(大阪高判平20/4/25 松下プラズマディスプレイ茨木工場事件)

 

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F. 労働審判(2006年から)

・裁判官と労使から各1名の審判委員から構成される。
・期日は3回以内。審理日数の平均は約75日。
・証拠は、書証と当事者の審尋に限られる。
・非公開。
・審判委員は、期日の評議の30分ほど前に裁判所で証拠書類を閲覧する。
・以上によって処理できないような複雑な事件は、対象外である。
・弁護士が代理につくのが原則。
・解雇・雇止め(48%)、賃金・残業代・退職金(38%)、その他労働条件の引き下げ、セクハラなど。組合と会社間の紛争は対象外。
・申立事件のうち7割は調停により解決、1割が途中で取下げ(そのうち半分は手続外で和解成立と推測される。)、審判に至るのは、2割。審判のうち4割強が確定。ほかは異議により訴訟に移行。
・労働審判に仮執行宣言は認められていないので、会社側の異議により訴訟に移行した場合は、労働審判を疎明資料にして仮処分により賃金の仮払い等を求めるのが良い。
・従来の労働仮処分・労働訴訟に代えて、特に都市部で激増している。愛媛県では、松山地裁本庁でのみ行われている。もっとも、リーマン・ショック後は、従来型の仮処分、労働訴訟も増加している。

 

その他の行政機関による個別労働紛争解決のあっせん
・県労働局によるあっせん
・県労働委員会によるあっせん
後者は、労働組合のからまない個別労働紛争のあっせんもするようになったがまだ少ない。多数労働者がからむような難しいケースにつき公労使の委員による説得が有益に機能することがある。

 

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G. 労災保険

(1)労災保険は、会社の無過失責任であり、従業員側の過失相殺がされない。

(2)慰謝料は対象外である。

(3)休業損害の全部ではなく、賃金に対する定率(おおむね平均賃金の80%)によって算定される。

(4)時効は、2~5年である。

 

慰謝料は、死亡の場合で3800万円、6か月入院の場合で244万円程度であり、交通事故賠償において相場が形成されている。
慰謝料は、労災保険では給付されない。会社の安全配慮義務違反を根拠にして個別に会社に請求しなければならない。全体の賠償額につき過失相殺されることもあり、そうなると保険金以上の追加が認められないことがありうる。
労災保険を受けるのみで慰謝料の請求がされないままになっている場合が多いと推測される。時効は10年である。

 

加害者側から見て被害者の受け取った労災保険給付が賠償額に通算されるかどうかは、年金の将来給付分について煩雑な問題がある。

 

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H. 残業代の計算

1. 割増率

・1日8時間、週40時間を超える労働には25%の割増がつく。
例えば1日7時間労働という契約がなされている場合に7時間30分の労働だと30分の部分は、残業には違いないが、割増はつかない。(所定外だが法定内残業という。)
商業、接客娯楽業など特定の事業で、常時10人未満の労働者を使用する場合は、1日8時間 週44時間まで許されている。(労基則25の2①)

1ヶ月の時間外労働の時間数が 60時間を超えた部分については、割増率は更に25%付加される。ただし、中小企業には適用が当面の間猶予されている。中小企業の要件は、小売業やサービス業でいえば資本金 5000万円以下で労働者の数が 100人以下など、詳細は労基法37条①但書 改正法附則 138条。適用がある場合でも労働者の選択により引き上げ分の割増賃金の代わりに有給休暇を取ることができる。

・週で1日または4週で 4日の法定休日労働には、35%の割増がつく。
週休2日制の場合、例えば日曜を休日労働にすることを予め指定しておく必要がある。その場合、土曜に労働しても法定外休日労働であって割増はつかない。ただ、土曜に8時間労働すると週40時間の限度を超える部分につき時間外労働になる可能性はある。

・午後10時から午前5時の間の深夜労働には25%の割増がつく。
時間外労働と深夜労働が重複すると50%の割増となる。
休日労働と夜間労働の重複は60%の割増となる。

・1ヶ月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の時間数の合計に 1時間未満の端数がある場合に、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは許される。(昭63/3/14基発第150号)

 

2. 時間当たりの基準賃金

・時間当たりの基準賃金に残業時間と割増率を乗じたものが残業代となる。

・給料から「家族手当」、「通勤手当」、「別居手当」、「子女教育手当」、「住宅手当」、「臨時に支払われた賃金」、「1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金」(限定列挙)を除外する。

・月給の場合は、年間の所定労働時間数を12で除して月の労働時間数を算出し、これで月給額を除する。

・1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に 1円未満の端数が生じた場合、四捨五入することは許される。
1ヶ月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた時は四捨五入して差支えない。(1日の合計の場合は許されない。)(前記通達)
割増率は、「~%以上」と書かれているので、端数が出た場合は、本来、割増を増やす方向で端数計算がなさるべきであるが、前記通達は、事務の簡便のため、一定の場合に四捨五入の計算をしても労基法違反としない取り扱いにしているのである。

 

3. その他

・遅延損害金は、退職後は 14.6%となる。(賃金支払確保法6条1項)

・賃金債権の時効は支払日から2年間である。

 

4. 労働時間

・「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内で行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外に行うものとされている場合であっても、当該行為に要した時間は労働時間に該当する。」(最判平12/3/9 三菱重工業長崎造船所事件)
作業衣等の着用が義務づけられており、この装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていた場合に、装着及び更衣所から体操場までの移動は労働時間になる。
始業時前、終了時後の入門退門に要する移動時間、入浴、着替え等は、洗身・入浴しなければ通勤が困難といえるのでない限り、労働時間に入らない。
作業終了後の身繕いに要した時間は労働時間に該当しないとした判例がある。
実作業終了後の洗身等は、事業所内の施設において洗身等を行うことを義務づけられてはおらず、特に洗身等をしなければ通勤が著しく困難であるとまではいえなかったから、 これに引き続いてなされた通勤服の着用を含めて、労働時間に該当しない、とした判例がある。

・使用者は労働者の安全配慮及び賃金算定の義務の関係上、実労働時間を把握する義務があり、そのための資料(タイムカードなど)を最低3年間保存しておく義務がある。(労基法109条、平13/4/6基発339号 )

 

5. 管理監督者

・「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」には残業代の規制は及ばない。(41条2号)(もっとも、これらの者にも深夜業や有給休暇の保護はある。) 企業全体の運営への関与までは要しないが、職務内容が少なくともある部門全体の統括的な立場にあることを要する。
該当しないとされた例 : 銀行の支店長代理、ファミリーレストランの店長、カラオケ店店長、ハンバーガーチェーン店の店長。

管理職に選ばれた喜びと誇りからか残業代の請求をしない傾向があるが、管理職というだけではここでいう「管理監督者」には該当しない。
ある調査によると、部長」と名がつくと 95%の労働者が残業代を支払われておらず、「課長」で88%、「課長代理」でも 51%が残業代を支給されていない。「名ばかり管理職」という言葉が世に出回り、随分と年月はたったがこの有様であるという。

6. 残業代請求の弁護士費用

・会社との折衝の着手金は、5万円(分轄払いは可能)
労働審判または訴訟に移行するときは15万円の追加(分轄払いは可能)

・報酬は、取得した金額の20%、300万円を超える部分については15%

・裁判所費用、郵便費用、交通費などの実費は依頼者の負担。

 

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I. 最低賃金

・愛媛県の最低賃金は時間当たり 696円(平27/10/3改定)、 717円(平28/10/1改定)

 

・「認定養成訓練中の者」については、使用者が県労働局長の許可を受ければ、最低賃金を減額できる。(法7条3号)
職業能力開発促進法19条1項「公共職業能力開発施設は、職業訓練の水準の維持向上のための基準として当該職業訓練の訓練課程ごとに教科、訓練時間、設備その他の基準に関し、所定の基準に従い普通職業訓練又は高度職業訓練を行うものとする。」
24条1項「県知事は、事業主等の申請に基づき、当該事業主等の行う職業訓練について、19条1項の基準に適合するものであることの認定をすることができる。」

 

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