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民事手続

A. 仮差押え・仮処分

1. 申立て

(二次的執行)
不動産に対する仮差押えとして登記をする方法のほかに強制管理の方法による執行を予定する場合には、仮差押え命令の申立書にその旨明示しておき、強制管理の執行申立ての際に仮差押え申立書の写しを添付する。(則32条2項)
船舶国籍証書の取上げを命ずる方法、自動車の取上げを命ずる方法、建設機械の取上げを命ずる方法、を併用する場合も同様である。

 

(借地権の仮差押え)
借地上に借地人所有の建物がある場合は、その建物を仮差押えすればよい。借地権譲渡についての賃貸人の承諾にかわる裁判(借地法9条の2または3)を求めればよい。
そのような建物のない場合の主文は次のようになる。

「債権者の債務者に対する前記債権の執行を保全するため、債務者の第三債務者に対する別紙記載の賃借権は仮に差し押さえる。」

 

(給料・退職金の仮差押え)
債務者に不動産などの財産がないことの疎明を求められることがある。債務者の住民票と住所地に債務者の不動産がないことの証明書(登記官からの該当なしとの回答書)を疎明資料として提出する。
退職金については退職の蓋然性ついての疎明が必要。

 

(株式の仮差押え)
会社が株式の発行を不当に遅延したとき、株主は、意思表示により会社に対する関係においても有効に株式を譲渡できる。(最大判昭47)

これを仮差し押さえるには、株券交付請求権を差し押さえるのではなく、株式自体を差し押さえる(社員権の持分と同様)。債務者に対し処分禁止、第三債務者(会社)に対し株券交付禁止などを申し立てる。

 

(離婚に伴う保全処分)
・審判の申立てがあった場合は、仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任その他の保全処分が可能である(家審15条の3)。
・調停前の保全処分には執行力は認められない。
・妻が現に居住し、財産分与が認められそうな場合は、財産分与のための処分禁止の仮処分が可能である。
・妻の固有財産である家財道具の引渡しについて断行の(満足的)仮処分である引渡しの仮処分が可能である。

 

(抵当権の実行禁止または競売手続の停止)
仮処分命令を得て、「担保権の実行を一時禁止する裁判の謄本」(民執183条1項7号) として提出する。

 

(仮の地位を定める仮処分)
交通事故の被害者による生活費の仮払い。
解雇無効確認訴訟中の賃金の支払いがないため生活に困窮している労働者の賃金の仮払い。

 

2. 保証金

(保証金の取戻し)
第三債務者の提出した陳述書に債権が不存在であるとの記載があるだけでは保証金の取戻しはできない。

 

3. 仮処分の取消し

(特別事情による仮処分の取消し)
・特許権や商標権の侵害に基いて製造、販売、使用などを禁止する仮処分がなされているとき、債権者の損害の算定が困難であること、名誉、信用についても顧慮する必要があるなどとして取消しを否定している例が多い。
・労働者の賃金仮払い、扶養料の仮払い、取締役の職務執行停止・代行者の選任、日照権に基づく差し止め請求権を保全すべき権利とする工事禁止仮処分などは、金銭的補償ができないか困難であるので否定される。

 

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B. 民事訴訟

1. 起訴前の証拠収集手続(132条の2以下)

(1)提訴予告通知

 

(2)起訴前の当事者照会

 

(3)起訴前の証拠収集処分

(イ)文書の送付嘱託(交通事故や医療過誤訴訟におけるカルテや看護記録、先物取引業者の建玉数、交通事故の刑事記録の写しなど)
(ロ)官公庁などの団体に対する調査の嘱託
(ハ)専門家に対する意見陳述の嘱託(建築瑕疵における建物の修繕費用に関する意見陳述、土地紛争における境界に関する意見陳述など)
(ニ)執行官に対する現況調査命令(占有関係調査など)

 

2. 文書提出命令の対象(220条)

(1号)「当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき 」

・所得税更正処分取消訴訟において被告税務署長が納税者の近隣同業者の青色申告決算書中の金額を移記して(氏名部分を抹消して)報告書を作成しているとき、右の青色申告書は、「引用文書」に該当するとした事例(大阪地決昭61)。
・該当しないとした事例(同平6)

 

(2号)「挙証者が文書の所持者に対しその引渡又は閲覧を求めることができるとき」

 

(3号前段)「文書が挙証者の利益のために作成されたとき」

(カルテ)
・スモン訴訟で症状発生後治療に当った医師の作成したカルテは製薬会社の利益のために作成されたものともいえる。(守秘義務は放棄されたものといえる。)(福岡高決昭52)
・該当しないとした判例(大阪高決昭53)

 

(3号後段)「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき」

・(原発訴訟)地域住民との関係で「行政処分がなされるまでの手続過程で作成され、行政処分の前提となった文書」は該当する。(高松高決昭50)同旨(仙台高決平5)
・(刑務所の現場記録表)原則的に法律関係文書とはいえないが、その提出を否定すべき理由はない。
・(労働訴訟)賃金差別訴訟における他の労働者の賃金台帳は、原告と会社との法律関係文書に該当するとした判例(大阪高決昭53)
・該当しないとした判例(同昭54)
(原発差止訴訟)原子炉施設周辺住民個々人に重大な危害を及ぼすおそれがないことを明らかにする目的で作成されたものであるから本号に該当する(仙台高決平5)。

 

(4号)「前三号に掲げるもののほか、文書が次に掲げるもののどれにも該当しないとき 」

 

除外文書イ、(一定の親族が刑事責任を受け、またはその名誉が害される場合)

 

除外文書ロ、「公務員の職務上の秘密に関する文書で、その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれのあるもの」

 

除外文書ハ前段、(医師、弁護士などの守秘義務)

 

同   ハ後段、「技術又は職業上の秘密」
・(最決平12)親子電話を購入した者が瑕疵による損害賠償をNTTに請求した場合に、製造メイカー作成の回路図および信号流れ図の提出を拒否したが、不利益の具体的内容を主張し立証すべきものとし、また「自己利用文書」であるとしても、「看過し難い不利益」を具体的に主張し立証することが必要であるとして差し戻した。

 

除外文書ニ、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く)」

(銀行の貸出稟議書)
・「特段の事情」のない限り該当する。(最決平11)
・信用金庫の代表訴訟において「特段の事情」に該当しない。(同平12)
・信用組合が破綻し清算中にあるときに、整理回収機構との関係で「特段の事情」がある場合に該当し提出義務がある。(最判平13)

 

除外文書ホ、(刑事事件や少年事件に係るもの)

・3号で許されることがある。

 

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C. 民事執行

1. 船舶執行

(1)船舶競売は、船舶抵当権のほか船舶先取特権に基づいてするのが普通である。船舶先取特権に基づけば「その存在を証する文書」を提出するだけで、判決を取る必要もなければ、保証金を積む必要もない。

外国籍船舶の場合は、準拠法の問題が出てくるが、それについては、「国際取引A国際私法」の項を見よ。

船舶競売の一段階では、高松、広島その他指定された地裁で、船舶が寄港するより前に「国籍証書引渡し命令」を取得しておく。船舶先取特権の存在と金額を証する文書の提出が必要である。(例えば、漁業クレームの場合は、事故を証明する文書と損害を証明する文書、給油代金の請求であれば契約書)この命令は、2週間有効である。

第二段階では、寄港地で執行官が「国籍証書引渡し命令」を執行する。その間に寄港地の地裁で、船舶競売開始決定を受ける。その中で、船舶の差押えが宣言され、執行官は、取り上げた国籍証書を裁判所に提出する。
船舶執行手続だけでなく、訴訟手続を並行させておく必要があるときは、船舶を差し押さえている間に、訴状を船長に送達しておくことを忘れないように。

第三段階で、船主は、請求債権全額の「保証」を提出し、船舶の解放を受ける。その後は、その「保証」を対象として手続きが継続され、決定が出ると保証人から弁済を受けることとなる。

日本の船舶先取特権の時効は、原則的に2年間であることに注意を要する。これを徒過した場合は、日本に定期傭船者がいれば、その定期傭船者に請求する途がある。この点については、前掲「国際私法」の項を見よ。

 

(2)船舶先取特権の準拠法が、米国法やそれに倣って作られたパナマ法になることがあり得る。これらの法の特徴は、船舶先取特権が船舶抵当権に優先するもの(漁業クレームなど )と船舶抵当権に劣後するものに2分されていることである。しかし、後者でも一般債権には優先するのであるから、法定担保物権には違いがない。従って、同法が準拠法になる場合には、無剰余でない限り、これに基づいて日本で船舶競売を申し立てることは可能である。

例えば、船舶の評価額が1億円、船舶抵当権が8000万円、給油代金が3000万円とすると、給油代金債権に基づいて船舶競売をした場合、実際にいくら回収できるかは、競売をやってみなければ分からないが、普通、船主は3000万円の「保証」をたてて、船舶の解放を求める。あとは、その保証を対象として手続が継続され、決定が出ると保証人から3000万円の支払いを受けることになる。

給油代金債権についていえば、日本法によると、航海の発航地における給油代金債権の船舶先取特権は、発航により消滅する(商847②)が、寄港地におけるものは、「航海継続の必要によりて生じたる債権」(同842条6号)により、船舶先取特権の対象とされる。

 

(3)香港やシンガポールなど英国法圏で船舶の差押えがなされる場合が多い。

英国法では、船舶先取特権の準拠法が法廷地法とされていて、船籍法などを顧慮する必要がないばかりでなく、その他の点でも手続きが分かり易い。

英国法では、船舶抵当権に優先する船舶先取特権(その範囲は、米国法とも違う。)とこれに劣後するスタチュトリー・リーエンに分けられており、後者は、米国法の劣後的船舶先取特権に相当する。すなわち、船舶を差し押さえることにより、船舶を被告とする対物訴訟を提起することが認められており、さらに船舶抵当権には劣後するが、船主に対するそのほかの一般債権には優先するから日本の船舶先取特権に相当するとして、日本においても船舶競売の申し立てが可能であると考えられる。

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