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刑事手続

A. 捜査

1. 被疑者による証拠保全の申立て

「被疑者、被告人または弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第1回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の訊問または鑑定の処分を請求できる。」(179条)

 

2. 告訴

親告罪の告訴は、原則として、「犯人を知ったときから」6ヶ月以内でなければならないが、強姦罪や誘拐罪などについては、その制限が平成12年からはずされた。(235条)

 

3. 警察官による職務質問の限界

・酒気帯び運転の疑いのある者が、自動車を発進させようとした場合に、警察官が窓から手を差し入れエンジン・キーを回転してスウィッチを切り運転を制止した行為は、「職務質問を行うため制止させる方法として必要かつ相当な行為」である。(最決昭53)
・覚醒剤使用の疑いのある者が自動車を発進させるおそれがあったため警察官がエンジン・キーを引き抜いて取上げた行為も同様。(最判平6)

 

4. 職務質問に伴う所持品検査の限界

・猟銃などによる銀行強盗の容疑の濃厚な者が職務質問中に所持品の開披要求を拒否するなどの不審な挙動を取り続けたため、警察官が承諾なしに施錠されていないバッグのチャックを開き、内部を一瞥して札束を発見した事案(米子銀行強盗事件)で、必要性、相当性、緊急性を満たしており適法。(最判昭和53)

 

・しかし、次の3例では、違法であるが、覚醒剤などの証拠能力は否定されないとした。
(イ)承諾なしに上着の内ポケットに手を差し入れて所持品(覚醒剤の包み)を取り出した行為。(最判昭53)
(ロ)左足首付近の靴下の部分が膨らんでいるのを見つけ、中のもの(覚醒剤の包みや注射器など)を取り出した行為。(最決昭63)
(ハ)自動車内を丹念に調べて粉末入りビニール袋(覚醒剤)を発見した行為。(最決平6)

 

5. 警察における取り調べ

次のような不当な取り調べがあったたときは、取調官を通じて、取調べ監督官に苦情申し出をし、それが調査をして、その事実があれば、取調べを中止させる等をする。県警本部長は取調べ調査官を指名してその調査をさせる。(「被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則」(2009/4)

 

(1)やむをえない場合を除き、被疑者の身体に接触すること

(2)その他直接または間接に有形力を行使すること

(3)ことさらに不安を覚えさせ、または困惑させるような言動をすること

(4)一定の姿勢または動作をとるよう不当に要求すること

(5)便宜を供与し、又は供与することを申し出、 もしくは約束すること

(6)被疑者の尊厳を著しく害するような言動をすること

(7)警察署長の事前の承認を受けないで、午後10時から翌日の午前5時までの間または1日につき8時間を超えて被疑者の取り調べをすること

 

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B. 公判

1. 保釈

  昭53 平17
勾留率 49% 62%
保釈率 42% 14%
勾留延長率 32% 53%
国選弁護率 50% 76%
保釈許可率 51% 54%
保釈請求率 92% 26%
保釈人の自白率
否認率
83%
17%
94%
6%
実刑率 41% 40%
平均真理期間 4.7月 3.2月
全体の自白率
否認率
87%
12%
92%
7%

※ 両年の間はいずれも漸増または漸減している。

 

「保釈保証金」(平10)

100~150万円 15%
150~200万円 35%
200~300万円 32%
300~400万円 9%

 

2. 公判前整理手続

① 「捜査官のメモ」類型証拠や主張関連証拠にはなりうる。名古屋高決平18/10(解剖に立ち会った捜査官の解剖結果などを記載した手控えの証拠開示を命じた。現に検察官の保管しているものに限られない。他の検察官の保管するもの、警察官から検察官に送致さるべき捜査書類も含まれる。)「捜査過程で作成され、公務員が職務上保管し、かつ検察官において入手が容易なもの、を含む。」(最決平20/6/25(判タ1275))

 

② 類型証拠開示(316の15)の実例

1号(証拠物) 防犯カメラ映像のビデオテープ
携帯電話メール送受信記録
被害者の着衣・持ち物
血痕採取状況報告書
110番通報の複製テープ
現場指掌紋送付書
足痕跡送付書
借用書
3号(検証調書など) 被告人の引当り捜査報告書
遺留品写真撮影報告書
死体検視報告書
犯行現場の写真撮影報告書
目撃者立会いの現場実況検分調書
4号(鑑定書など) 精神状態に関する簡易鑑定書
衣服の灯油成分反応に関する鑑定書
現場遺留血痕・指紋に関する鑑定書
DNA鑑定書(現場遺留血痕)
毛髪の鑑定書
6号 (供述調書など) 犯行時直前の被害者を目撃した状況に関する供述調書
犯行目撃者の供述調書

 

3. 黙秘

被告人が黙秘して氏名すら記載しないときは、弁護人選任は無効である。(最大判昭32、最決昭40)

 

4. 被告人の出頭不要

50万円以下の罰金にあたる事件の被告人は出頭を要せず、代理人のみを出頭させることができる。(284条)

 

法定刑が長期3年以下など(公務執行妨害、暴力行為等処罰法1条違反、傷害罪は当たらない。)は、冒頭手続と判決言渡しのときを除き、裁判所の許可を得て出席しないことができる。(285条)

 

5. 被害者の参加

(1)訴訟記録の閲覧・謄写(犯罪被害者保護法 3,4条)

被害者は、訴訟記録の閲覧・謄写を裁判所に求めることができる。ただし、第1回公判期日から終結までの公判継続中に限る。
同種余罪の被害者を含む。ただし、この場合は、検察官を通じて申し立てる。
事件に制限はなく、交通事故や医療過誤事件につき、有効であろう。

 

(2)示談書に執行力を付与(同13~16条)

被害者(本人出頭が必要)は、示談書を公判調書に記載してこれに執行力を与えることを申し立てることができる。

 

(3)被害者の刑事訴訟への参加(刑訴316の33~39、犯被保5~12)

殺人、傷害など所定の故意犯のほかに業務上過失致死傷、自動車運転過失致死傷についても可能であるから自動車事故や医療過誤事件について有効であろう。
被害者として被告人質問や、意見陳述をすることができる。

 

(4)刑事訴訟での損害賠償命令(犯被保17~32)

殺人、傷害など所定の故意犯に限られることに注意。
2週間以内に異議を申し立てると通常の民事訴訟に移される。ただし、仮執行宣言の効力は失われない。

 

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C. 証拠

1. 自白の任意性

「任意にされたものでない疑いのある自白は証拠とすることができない。」(319条1項)

 

・警察官の叱責、誘導があったとしても強制による自白とはいえない。(最大昭23)
・違法な勾留中に作成された自白調書の証拠能力を肯定。(最判昭25)
・手錠をかけたまま取り調べて得た自白を否定。(最判昭38、同41)
・不当に長い抑留、拘禁のあとの自白として排除。(最判昭23)
・糧食の差し入れを禁じてその間に得た自白を否定。(最判昭32)

 

以上からして

 

・重病や薬物の禁断症状下であったり、体調や取調べの状況により披露困憊に陥ったりしている場合も疑いを生じるであろう。
・取調べの過程で、起訴猶予(最判昭41)、早期釈放、恩赦など、刑事責任に関する約束をして得た自白は、任意性を肯定できない。
・金銭の供与、薬物中毒者に対する薬物の供与などによる利益誘導などについても同様。
・犯者が自白しているものと錯誤に陥れたり(最大判昭45)、現場に遺留された体液が被疑者のものと一致するとの虚言を用いたり(東京地判昭62)、のような偽計による取調べについても任意性に疑いがある。

 

2. 違法な手続下における自白

・要件を満足しないで現行犯逮捕した被疑者の自白を排除。(大阪高判昭40)
・別件逮捕
・勾留中の自白も同様の議論がなしうる。
・身柄拘束中の被疑者が弁護人の助言を受ける権利を侵害されたとき、接見制限に重大な違法があったときも同様。

 

3. 伝聞証拠

・伝聞証拠であっても、異議の申立てのないまま当該証人に対する尋問が終了した場合には、直ちに異議の申立てができないなどの特段の事情がない限り、黙示の同意があったものとして証拠能力を有する。(最決昭59)

 

4. 違法な手続による証拠

・覚醒剤使用事犯の捜査にあたり、警察官が被疑者宅寝室に承諾なしに立入り、また明確な承諾のないまま同人を警察に任意同行したうえ、退去の申し出に応ぜず同署に留めおくなど、任意捜査の域を逸脱した一連の手続きに引き続いて、尿の提出、押収が行われた被疑者に対し、警察に留まることを強要するような警察官の言動はなく、また尿の提出自体はなんらの強制も加えられることもなく、その違法の程度はまだ重要であるとはいえず、右尿についての鑑定書の証拠能力は否定されない。(最判昭61)

 

5. 「実践!刑事証人尋問技術」(大阪弁護士会2009/4)

(1)不相当な尋問(規則199の13②)

1.威嚇的または侮辱的な尋問
2.重複する尋問
3.意見を求めまたは議論にわたる尋問
4.承認が直接経験しなかった事実についての尋問

 

(2)主尋問

主尋問では誘導しない。日頃から感覚を鋭敏にすること。

 

(3)反対尋問

・「なぜ?」と聞くな。反対尋問は自分の欲する答えに証人を連れていく技術である。
「なぜ?」と問えば、その途端、証人は弁解する機会を得る。
・主尋問の目標が立証であるのに対し、反対尋問のそれは弾劾である。反対尋問では弁解をさせるな。
・誘導尋問によって証人を矛盾へと誘導し、そこにピンで止めた上で矛盾を突きつける。そのあとは、深追いするな。矛盾する周辺事実を積み重ねよ。大げさに否定するのを攻めよ。
・則199の2~14に精通せよ。

 

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D. 不服申立て

1. 申立て

原裁判所に提出する。
在監の被告人は、監獄の長に提出したときに申立てがあったものとみなされる。(366条)

 

2. 期間

即時抗告は3日(422)
準抗告は3日または実益のある間(429)
特別抗告は5日(433)

 

3. 趣意書

控訴(上告)趣意書は、控訴(上告)裁判所の指定する期間内。(386、414)

抗告の場合は、申立書に抗告の理由も記載する。申立書に記載がなくとも、申立て期間内に理由書の提出があるとこれで補完できる。

 

4. 簡裁判決に対する控訴

民事と違って高裁にする。

 

5. 控訴の理由

原判決後の事情を前提に量刑の不当を主張できないが、被告人側から控訴理由のなかで、たとえば示談の成立を主張して職権の発動を求めることが多い。(397、393)

 

6. 準抗告

(イ)429条の準抗告は、裁判官のした忌避申立て却下(1号)、勾留、保釈などに関する裁判(2号)、鑑定留置に関する裁判(3号)。
簡易裁判官に対するものは地裁、地裁の裁判官に対するものは、地裁の合議体(429)。
準抗告では、抗告と違い、申立書が原裁判官を経由しない。

 

(ロ)430条の準抗告は、検察官側のした接見などに関する日時・場所の指定(39)と押収または押収物の保管に関する処分。
検察官または検察事務官のものには地裁の単独裁判官。司法警察職員に対するものは地裁または簡裁。

 

7. 村木厚子「私は泣かない、屈さない」(文芸春秋 2010/10月号)

・厚生労働省 雇用均等・児童家庭局長(54才)

 

・どんなに説明しても、検事さんの書きたいことしか書いてもらえない。話した中から、検事さんが取りたい部分だけつまみ出されて調書になる。そこから、どれだけ訂正してもらえるかの交渉が始まるんです。

 

・弁護士から「石井(議員)さんはあの日はゴルフに行ってたんだって」と聞いた時は、怒るより、全身から力が抜けました。事件の出発点から嘘だったのか。

 

・身柄拘束は保釈されるまで163日間。保釈金は1500万円。

 

・検事の土俵にいる限り、私が勝つことなんてありえない。だとすると、やらなきゃならないのは、負けてしまわないことですよね。負けてしまわない、ということは、やってないことを「やった」と言わないこと。もうそれしか目標を作りませんでした。

 

・次女は、夏休みの間、大阪にウィークリーマンションを借りていました。朝、拘置所に面会に行って、そこから予備校の夏期講習に行くんです。

 

・逮捕前、さんざん報道されている時に、私が高知の実家に電話したんです。父は「やったのか」と。「やってない」と答えたら、「徹底的に戦え」というので、私が「徹底的に戦う」と応じて、電話はその二往復で終わりました。

 

・拘置所の中では、ずっと座りっぱなしなので、足が弱って駅の階段を一気に上れなくなっているんです。実際に体が動いたのは、半年間拘置所に入っていて、外に出て回復するのに半年かかったわけです。

 

・経済的負担も大きいんです。保釈金1500万円も痛かったし、弁護士さんへの費用や実費もかかります。今のところ支援もいただいているし、夫が働いているので生活ができていますが、もし私が一家の大黒柱だったらこんな風に戦えただろうか。

 

8. 平27刑訴法改正法

項目によって公布から20日、6ヶ月、2年、3年で施行される。

 

(取調べの録音録画)2019/6までに施行される。

・現在のところ裁判員裁判事件と検察独自捜査事件が対象。
対象事件の全過程に録音録画義務。

・任意性が争われた場合は証拠調べの請求をする義務がある。請求しない場合は当該調書の取調べ請求は却下される。

 

(捜査・公判協力型司法取引)2018/6までに施行。

・財政経済関係犯罪、薬物銃器犯罪が対象。

・検察官が弁護人の同意を得て、被疑者・被告人との間で、被疑者・被告人が他人の犯罪事実を明らかにするための供述等をし、検察官が不起訴や特定の求刑等をする旨の合意をする。
被告事件について合意があるとき又は合意に基づいて得られた証拠が他人の刑事事件の証拠となるときは、検察官は合意に関する書面の取調べを請求しなrければならない。
検察官が合意に反して公訴を提起した時は、裁判所は、判決で当該公訴を棄却しなければならない。検察官が合意に違反したときは、協議において被疑者・被告人が他人の犯罪事実を明らかにするための供述及び合意に基づいて得られた証拠は、原則として、証拠とすることはできない。

 

(刑事免責)前同

・裁判所の許可(免責決定)を得て、免責を与える条件の下で証人にとって不利益な事項の証言をさせる。

 

(通信傍受の拡大)2016/12までに施行。

・現行の対象犯罪は、薬物、銃器、集団密航、組織的殺人。
これに、殺傷犯、逮捕監禁略取誘拐、窃盗強盗、詐欺恐喝、児童ポルノを追加する。ただし、「予め定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われると疑うに足りる状況」が必要。

 

(裁量保釈の条件緩和)2016/6/23施行。

・逃亡し又は罪証隠滅のおそれのほか、被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益その他の事情を考慮することを90条に明記。

 

(被疑者国選弁護の拡大)2018/6までに施行。

・現行の死刑・無期・長期3年超の罪の勾留事件から、勾留された全事件を対象へ。

 

(証拠開示の拡大)2016/12までに施行。

・被告人側から請求のあったときは、検察官に保管証拠の一覧表を交付する義務。

・被告人及び弁護人に公判前整理手続の請求権を付与。

 

(犯罪被害者・証人の保護)2016/12までに施行。

・加害などのおそれがある場合に、
(イ)証人の氏名・住居を被告人に知らせない条件を付して弁護人に開示し、
(ロ)特に必要な場合は、弁護人にも知らせないで、代替的な呼称や連絡先を弁護人に開示する。

・加害などのおそれがある場合、証人などの氏名などを公開の法廷で明らかにしない旨の決定ができる。

 

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