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不動産取引

A. 借家法

1. 無効の特約

(1)

自然の損耗による現状回復費用(例えば、カーペットの取り換え、壁紙の張り替え、畳の表変え、襖の張り替え)を借家人の負担とする特約は、消費者契約法10条により無効である。(京都地判平16、大阪高判平16、同平17)

消費者契約法10条とは、「消費者の利益を一方的に害する」特約は無効とする。
同法は、平13に制定され、その後に更新された契約にも適用がある(前記判例)。

 

(2)

敷金のうち一定の割合(例えば5割)を返還しないものとする(いわゆる敷引)特約も、同様に無効である。(大阪高判平21/12/3、同12/15)
「定額補修分担金」なるものの負担の特約も同様である。

最判平23/7/15(最高裁HP)は、敷引契約について「敷引金の額が賃料の額に照らし、高額に過ぎるなどの事情があれば格別、そうでない限り」消費者契約法10条に反しないとした。本件の場合家賃の3・5倍程度にとどまっており高額に過ぎるとはいい難いとした。
マンションの1室を借り、月家賃17万50000円(後に17万円に減額)、保証金100万円で60万円の敷引の特約、6年間居住したという事案である。

 

(3)

2ヶ月分の家賃を滞納したときには解除できる、との特約も、原則的には無効である。

 

(4)

借家人が現実に明渡しするまで家賃相当額の(例えば)2倍の損害金を請求できる、とする特約は、消費者契約法9条に反し、家賃相当額を超える部分は、「平均的な損害額を超える」部分として無効である。

 

(5)

無効な条項に基づき敷金が返還されないときは、簡易裁判所(140万円まで)の少額訴訟手続(60万円まで)により返還請求するのが簡便である。様式が用意されていて自分でできるし、原則1回の出頭で済む。ただし、被告が異議を出せば通常訴訟手続に移行する。

 

2. 「定期借家契約」(38条)

平12から導入されたが、余り使われていない。

・家主は、予め「契約の更新はないこととする」旨を書面で説明すること。
・家主は、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、終了の通知をすること。この通知がないと普通の借家契約に変わると解される。
・中途解約は、借家人からもできないのが原則であることに注意。すなわち、居住用の場合には、「転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情がある場合に限り」借家人から解約できる。
・家賃の改定はしないとの特約があるときは、家賃の増減の請求はできない。
・既存の借家契約を、合意により、定期借家契約に変えることは、「居住用の借家」については、「当分の間」認められない。(附則3)

 

3. 更新料は有効か無効か

最近の下級審で有効としたもの

① 京都地判平20/1/30 契約期間1年、更新料2ヶ月分
② 大津地判平21/3/27 期間2年、更新料2ヶ月分
③ 大阪高判平21/10/29 ②を是認
⑩ 京都地判平22/8/25 期間1年、更新料2ヶ月分(判タ1334)

 

次の下級審判決は、消費者契約法10条(「消費者の利益を一方的に害する」もの)に反するものとして無効とし、同法が施行された平成13/4/1以後に支払われた更新料の返還を命じていた。

④ 京都地判平21/7/23 契約期間2年、敷金2ヶ月分
⑤ 大阪高判平21/8/27 ①の控訴審
⑥ 京都地判平21/9/25 契約期間1年、更新料2ヶ月分(判タ1317)
⑦ 同(最高裁HP) 期間2年、更新料2ヶ月分
⑧ 大阪高判平22/2/24 ⑥を是認
⑨ 同平22/5/27 ⑦を是認

 

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B. 借地法

1. 借地非訟事件の承諾料

(1)

借地条件の変更、借地権譲渡・転貸許可、競売公売に伴う借地権譲渡許可の場合は、更地価格の10%を基準として、その5~10%を増減する。

 

(2)

増改築許可は、全面改築で、更地価格の3%を基準として、全面的改築でも土地の利用効率が増大する場合は、更地価格の5%までの範囲で適宜増額、一部の増築の場合は、更地価格の3%から適宜増減する。

 

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C. 建築請負

1. 設計

(1)予算

予算増額は、工事予算の20%ぐらいまでが債務不履行または設計の瑕疵と見られない限界である。

 

(2)著作権

「建築に関する図面に従って建築物を完成することは」、複製である。(2①15ロ) 建築図面をコピーすることは複製権の侵害であることは、当然であるが、建築図面をに基ずいて「著作物でない建築物」(一般の民家、工場など)を建築することは著作権侵害にならない。しかし、「著作物たる建築物」(美術的な建物など)を建築するのは複製権侵害となる。
「建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変」については、著作者人格権の同一性保持権は適用されない。(20②2)

 

2. 工事監理

建築士は、工事が設計図書の通りに実施されていないと認めるときは、直ちに工事施行者に対し注意を与え、工事施工者ががこれに従わないときは、建築主に報告しなければならない。(建築士法18④)

 

3. 請負工事

(1)商事留置権

建物の建築請負業者は、建物ばかりでなく敷地についても商事留置権を取得するか。

 

最判はない。
取得するとするもの。東京高決平6(2)、同平10(3)
反対。東京高判平8、東京高決平11
学説も分かれている。

 

不動産に対する商事留置権は、破産により特別の先取特権になるが、留置的効力は失われると解すべきである。抵当権との優劣は、占有の開始と抵当権登記との先後によることとなろう。
なお、手形に対する商事留置権は、破産によって留置的効力は失われない、とする最判平10がある。

 

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